当てはめでわかるなら専門家はいらない。法人税法 税理士試験 第61回 第一問 問1 [税理士試験と実務の接点]
法人税法における基本的な制度に関し、具体的な事例への適用についての問いかけを行い、法令等を正しく解釈・適用することができるかどうかという能力を問う問題
当てはめでわかるなら専門家はいらない。
解釈の意味がわからないと専門家なんかに絶対なれない。
ちなみに
「解釈という論理操作を経ることなく意味の明瞭な法は、一つも無い。」
もう一度確認です。
「当てはめでわかるなら専門家はいらない。」
ついに税理士試験も司法試験化です。専門家を創るとなれば、正しいです。
内国法人であるA社(3月末決算)は、貸金業を営む100%子会社である内国法人のB社(3月末決算)が多額の不良債権を抱えて業績不振に陥っていることから、当面の資金繰りを支援するため、平成24年1月25日に、B社が保有しているX社に対する金銭債権をその帳簿価額である100,000,000円で買い取った(当該金銭債権の時価は10,000,000円とする。)。なお、A社は、個人株主によってその発行済株式の全部を保有されている法人であり、B社から買い取った金銭債権を同年3月末までに売却又は貸倒処理することなく、そのまま保有している。この場合のA社及びB社の当期(平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度をいう。)における税務上の処理はどのようになるか。その法的な理由・考え方を、仕訳を示しながら簡潔に説明しなさい。
(A社の仕訳)
| 借 方 | 貸 方 | ||
| 項 目 | 金 額 | 項 目 | 金 額 |
| 金銭債権 | 10,000,000 | 現金 | 100,000,000 |
| 寄附金 ※1 | 90,000,000 | ||
| 寄附金損金不算入 ※2 | 90,000,000 | その他流出 | 90,000,000 |
| B社株式 ※3 | 90,000,000 | 利益積立金額 | 90,000,000 |
| 借 方 | 貸 方 | ||
| 項 目 | 金 額 | 項 目 | 金 額 |
| 現金 | 10,000,000 | 金銭債権 | 100,000,000 |
| 譲渡損失額 ※4 | 90,000,000 | ||
| 譲渡損益調整勘定 ※5 | 90,000,000 | 譲渡損失調整勘定戻入 | 90,000,000 |
| 現金 ※6 | 90,000,000 | 受贈益 | 90,000,000 |
| 受贈益益金不算入 ※7 | 90,000,000 | その他流出 | 90,000,000 |
(法的な理由・考え方)
1.解答
(1) 概要 平成22年度の税制改正により、いわゆるグループ法人税制が導入された。これは、企業グループが一体的に経営されている実態を踏まえ、100%持株関係(完全支配関係)のあるグループ内法人間で資産の移転が行われた場合には、その時点で課税関係を生じさせないという基本的な考え方に基づくものである。
(2) A社の税務上の金銭債権の取得価額とB社の税務上の金銭債権の譲渡対価の額
課税関係を生じさせないといっても、税務上は時価により譲渡があったものとなるので、A社の金銭債権の取得価額は、10,000,000円、B社の譲渡対価の額は10,000,000円として、それぞれ申告調整を行うこととなる(時価と帳簿価額との差額の調整を申告調整で行う)。
(3) 時価譲渡を認識した上で課税関係を繰り延べるためのA社の税務上の処理
A社は、帳簿価額100,000,000円と時価10,000,000円の差額90,000,000円の寄附金の認容(法22③※1)と寄附金の損金不算入処理(法37②※2)及びB社株式のの寄附修正処理(令9七※3)を行う。
(4) 時価譲渡を認識した上で課税関係を繰り延べるためのB社の税務上の処理
B社の譲渡した金銭債権の譲渡直前の帳簿価額は10,000,000万円以上であることから、譲渡損益調整資産に該当する。 譲渡損益調整資産の譲渡であっても、資産の譲渡であることには変わりないので、その譲渡に係る対価の額は実際に収受した金銭等の額ではなく、譲渡時の当該資産の価額(時価)によることとなる。「完全支配関係がある法人の間の取引の損益」の規定は、このことを前提とした上で、その譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額を調整することとしたものである。したがって、B社は、帳簿価額100,000,000円と時価10,000,000円の差額90,000,000円の譲渡損失額の計上(法22③※4)と譲渡損失額の繰延べ(損金不算入)(法61の13①※5)及び受贈益の計上(法22②※6)と受贈益の益金不算入処理(法25の2①※7)を行う。 (5) まとめ グループ内法人間で資産の移転が行われた場合には、その時点で所得の金額に影響を与えないことできるが、これは、帳簿価額で取引をしても良いということではなく、あくまで課税の繰延が行われていることになる。
2.根拠規定
(A社)
■(定義)
第2条十二の七の六
完全支配関係 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいう。
■各事業年度の所得の金額の計算
第22条3
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。 一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額 二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
■(寄附金の損金不算入)
第37条2
内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第25条の2(受贈益の益金不算入)又は第81条の3第1項(第25条の2に係る部分に限る。)(個別益金額又は個別損金額の益金又は損金算入)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額に算入される第25条の2第2項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
●(利益積立金額)
第9条
法第2条第十八号(定義)に規定する政令で定める金額は、同号に規定する法人の当該事業年度前の各事業年度(以下この項において「過去事業年度」という。)の第一号から第七号までに掲げる金額の合計額から当該法人の過去事業年度の第八号から第十二号までに掲げる金額の合計額を減算した金額に、当該法人の当該事業年度開始の日以後の第一号から第七号までに掲げる金額を加算し、これから当該法人の同日以後の第八号から第十二号までに掲げる金額を減算した金額とする。
七
当該法人が有する当該法人との間に完全支配関係がある法人(以下この号において「子法人」という。)の株式又は出資について寄附修正事由(子法人が他の内国法人から法第25条の2第2項に規定する受贈益の額で同条第1項の規定の適用があるものを受け、又は子法人が他の内国法人に対して法第37条第7項(寄附金の損金不算入)に規定する寄附金の額で法第37条第2項の規定の適用があるものを支出したことをいう。)が生ずる場合の当該受贈益の額に当該寄附修正事由に係る持分割合(当該子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式又は出資(当該子法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに当該法人が当該直前に有する当該子法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合をいう。)を乗じて計算した金額から寄附修正事由が生ずる場合の当該寄附金の額に当該寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額
●(移動平均法を適用する有価証券について評価換え等があつた場合の一単位当たりの帳簿価額の算出の特例)
第119条の3
6
内国法人の有する第9条第1項第七号に規定する子法人の株式について同号に規定する寄附修正事由が生じた場合には、その株式の当該寄附修正事由が生じた直後の移動平均法により算出した一単位当たりの帳簿価額は、当該寄附修正事由が生じた時の直前の帳簿価額に同号に掲げる金額を加算した金額をその株式の数で除して計算した金額とする。
(B社)
■(定義
)第2条十二の七の六 完全支配関係 同上 省略
■各事業年度の所得の金額の計算
第22条2
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 同上 省略
■(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
第61条の13
内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。以下この条において同じ。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額(その譲渡に係る対価の額が原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)又は譲渡損失額(その譲渡に係る原価の額が対価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)に相当する金額は、その譲渡した事業年度(その譲渡が適格合併に該当しない合併による合併法人への移転である場合には、次条第2項に規定する最後事業年度)の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。
●(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
第122条の14
法第61条の13第1項 (完全支配関係がある法人の間の取引の損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。 一 法第61条の3第1項第一号 (売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目 的有価証券(次号及び第4項第六号において「売買目的有価証券」という。) 二 その譲渡を受けた他の内国法人(法第61条の13第1項の内国法人との間に完全支配関係があるものに限る。以下 この条において同じ。)において売買目的有価証券とされる有価証券(前号又は次号に掲げるものを除く。) 三 その譲渡の直前の帳簿価額(その譲渡した資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。)が千万円に満たない資産(第一号に掲げるものを除く。)16 内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産(第1項第一号又は第三号に掲げるものを除く。以下この項において「譲渡損益調整資産該当資産」という。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、その譲渡の後遅滞なく、当該他の内国法人に対し、その譲渡した資産が譲渡損益調整資産該当資産である旨(当該資産につき第6項の規定の適用を受けようとする場合には、その旨を含む。)を通知しなければならない。
■(受贈益の益金不算入)
第25条の2
内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人から受けた受贈益の額(第37条(寄附金の損金不算入)又は第81条の6連結事業年度における寄附金の損金不算入)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入される第37条第7項(第81条の6第6項において準用する場合を含む。)に規定する寄附金の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
法人税法 税理士試験 第61回 第一問 問1 税務仕訳の意図 [税理士試験と実務の接点]
内国法人であるA社(3月末決算)は、貸金業を営む100%子会社である内国法人のB社(3月末決算)が多額の不良債権を抱えて業績不振に陥っていることから、当面の資金繰りを支援するため、平成24年1月25日に、B社が保有しているX社に対する金銭債権をその帳簿価額である100,000,000円で買い取った(当該金銭債権の時価は10,000,000円とする。)。なお、A社は、個人株主によってその発行済株式の全部を保有されている法人であり、B社から買い取った金銭債権を同年3月末までに売却又は貸倒処理することなく、そのまま保有している。この場合のA社及びB社の当期(平成23年4月1日から平成24年3月31日までの事業年度をいう。)における税務上の処理はどのようになるか。その法的な理由・考え方を、仕訳を示しながら簡潔に説明しなさい。
(A社の仕訳)
| 借 方 | 貸 方 | ||
| 項 目 | 金 額 | 項 目 | 金 額 |
| 金銭債権 | 10,000,000 | 現金 | 100,000,000 |
| 寄附金 | 90,000,000 | ||
| 寄附金損金不算入 | 90,000,000 | その他流出 | 90,000,000 |
| B社株式 | 90,000,000 | 利益積立金額 | 90,000,000 |
| 借 方 | 貸 方 | ||
| 項 目 | 金 額 | 項 目 | 金 額 |
| 現金 | 10,000,000 | 金銭債権 | 100,000,000 |
| 債権譲渡損 | 90,000,000 | ||
| 現金 | 90,000,000 | 受贈益 | 90,000,000 |
| 譲渡損益調整勘定 | 90,000,000 | 譲渡損益調整益 | 90,000,000 |
| 受贈益益金不算入 | 90,000,000 | その他流出 | 90,000,000 |
(法的な理由・考え方)
[ 1 ] A社とB社の関係(完全支配関係)B社はA社の100%子会社であることから、A社とB社との間には法人による完全支配関係がある。■(定義)第2条十二の七の六 完全支配関係 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいう。
[ 2 ] A社における税務上の処理
譲受法人A社及び譲渡法人B社の所得の金額に影響があるなしにかかわらず、税務上は時価により譲渡があったものと考える。したがって、譲受法人A社において会計上帳簿価額により処理している場合には、取得価額を10,000,000円として申告調整を行う必要がある。具体的には、A社はB社から資産を高価買入れすることによりB社に対して実質的に経済的な利益の供与をしたと認められることから、時価(10,000,000円)と譲渡対価の額(10,000,000円)との差額(以下「時価差額」という。)を寄附金の額として認容し、同額を取得した金銭債権の取得価額から減算した上で、その全額を損金不算入とする申告調整を行う。また、A社の有するB社株式について寄附修正事由が生じているため、B社における受贈益の額90,000,000円相当額が利益積立金額の増加額となり、同額がB社株式の帳簿価額の増加額となる。
■(寄附金の損金不算入)
第37条2
内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益の益金不算入)又は第八十一条の三第一項(第二十五条の二に係る部分に限る。)(個別益金額又は個別損金額の益金又は損金算入)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額に算入される第二十五条の二第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
●(利益積立金額)
第9条
法第2条第十八号(定義)に規定する政令で定める金額は、同号に規定する法人の当該事業年度前の各事業年度(以下この項において「過去事業年度」という。)の第一号から第七号までに掲げる金額の合計額から当該法人の過去事業年度の第八号から第十二号までに掲げる金額の合計額を減算した金額に、当該法人の当該事業年度開始の日以後の第一号から第七号までに掲げる金額を加算し、これから当該法人の同日以後の第八号から第十二号までに掲げる金額を減算した金額とする。 七 当該法人が有する当該法人との間に完全支配関係がある法人(以下この号において「子法人」という。)の株式又は出資について寄附修正事由(子法人が他の内国法人から法第25条の2第2項に規定する受贈益の額で同条第1項の規定の適用があるものを受け、又は子法人が他の内国法人に対して法第37条第7項(寄附金の損金不算入)に規定する寄附金の額で法第37条第2項の規定の適用があるものを支出したことをいう。)が生ずる場合の当該受贈益の額に当該寄附修正事由に係る持分割合(当該子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式又は出資(当該子法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに当該法人が当該直前に有する当該子法人の株式又は出資の数又は金額の占める割合をいう。)を乗じて計算した金額から寄附修正事由が生ずる場合の当該寄附金の額に当該寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額
●(移動平均法を適用する有価証券について評価換え等があつた場合の一単位当たりの帳簿価額の算出の特例)
第119条の3
6
内国法人の有する第九条第一項第七号に規定する子法人の株式について同号に規定する寄附修正事由が生じた場合には、その株式の当該寄附修正事由が生じた直後の移動平均法により算出した一単位当たりの帳簿価額は、当該寄附修正事由が生じた時の直前の帳簿価額に同号に掲げる金額を加算した金額をその株式の数で除して計算した金額とする。
[ 3 ] B社における税務上の処理
譲渡した金銭債権の譲渡直前の帳簿価額は10,000,000万円以上であることから、譲渡損益調整資産に該当する。譲渡損益調整資産の譲渡であっても、資産の譲渡であることには変わりないので、その譲渡に係る対価の額は実際に収受した金銭等の額ではなく、譲渡時の当該資産の価額(時価)によることとなる。「完全支配関係がある法人の間の取引の損益」の規定は、このことを前提とした上で、その譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額を調整することとしたものである。したがって、譲渡法人B社において会計上帳簿価額による譲渡と処理している場合には、譲渡対価の額を10,000,000円として申告調整を行う必要がある。具体的には、B社における譲渡対価の額は、譲渡損益調整資産である土地の譲渡時の時価10,000,000円となり、90,000,000円の時価差額を譲渡損失額として計上した上で、その譲渡損失額の繰延処理を行う。また、法人が高額で資産を譲渡したことによるその対価の額とその価額との差額のうち実質的に贈与又は経済的な利益の供与を受けたと認められる部分の金額は、受贈益の額に含まれるものとされることから、同額を受贈益として計上した上で、その全額を益金不算入とする申告調整を行う。
■(受贈益の益金不算入)
第25条の2
内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人から受けた受贈益の額(第三十七条(寄附金の損金不算入)又は第八十一条の六(連結事業年度における寄附金の損金不算入)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入される第三十七条第七項(第八十一条の六第六項において準用する場合を含む。)に規定する寄附金の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
■(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
第61条の13
内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。以下この条において同じ。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額(その譲渡に係る対価の額が原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)又は譲渡損失額(その譲渡に係る原価の額が対価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)に相当する金額は、その譲渡した事業年度(その譲渡が適格合併に該当しない合併による合併法人への移転である場合には、次条第2項に規定する最後事業年度)の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。
●(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)
第122条の14
法第61条の13第1項 (完全支配関係がある法人の間の取引の損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。 一 法第61条の3第1項第一号 (売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的有価証券(次号及び第4項第六号において「売買目的有価証券」という。) 二 その譲渡を受けた他の内国法人(法第61条の13第1項の内国法人との間に完全支配関係があるものに限る。以下この条において同じ。)において売買目的有価証券とされる有価証券(前号又は次号に掲げるものを除く。) 三 その譲渡の直前の帳簿価額(その譲渡した資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。)が千万円に満たない資産(第一号に掲げるものを除く。)16 内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産(第1項第一号又は第三号に掲げるものを除く。以下この項において「譲渡損益調整資産該当資産」という。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、その譲渡の後遅滞なく、当該他の内国法人に対し、その譲渡した資産が譲渡損益調整資産該当資産である旨(当該資産につき第6項の規定の適用を受けようとする場合には、その旨を含む。)を通知しなければならない。
法人税法 税理士試験 第61回 第一問 問1 解明のために [税理士試験と実務の接点]
第1ステップ
まずはしっかり吟味
問 内国法人G1は、完全支配関係を有する他の内国法人G2に対して時価100百万円の土地をG1の帳簿価額80百万円で譲渡することとしました。帳簿価額で譲渡することとした理由は、グループ法人税制の創設によって、①完全支配関係がある法人間の譲渡損益調整資産の譲渡による譲渡利益額は繰り延べられることとされ、また、②時価と帳簿価額との差額をG1において寄附金の額とし、G2において受贈益の額としても、寄附金の損金不算入及び受贈益の益金不算入規定により、いずれの法人においても所得の金額に影響がないと思われるからです。(1) このように譲渡損益調整資産を帳簿価額で譲渡した場合には、G1及びG2の所得の金額に影響がないことから、税務上もG1の土地の譲渡対価の額を帳簿価額である80百万円とし、G2の当該土地の取得価額を80百万円としてもよろしいでしょうか。(2) 仮に(1)の処理が認められない場合には、譲渡法人G1及び譲受法人G2 は、それぞれどのような申告調整を行う必要がありますか。
| 譲渡法人の税務処理 | 譲受法人の税務処理 |
| ・譲渡利益額の計上・譲渡利益額の繰延べ(益金不算入)・寄附金認容・寄附金の損金不算入 | ・受贈益の計上・受贈益の益金不算入 |
| 譲渡法人の税務処理 | 譲受法人の税務処理 |
| ・譲渡損失額の計上・譲渡損失額の繰延べ(損金不算入)・受贈益の計上・受贈益の益金不算入 | ・寄附金の認容・寄附金の損金不算入 |
| 内 容 | 譲渡法人(G1)の処理 | 譲受法人(G2)の処理 |
| 譲渡時 | ≪会計処理≫現金 80/土地 80 | ≪会計処理≫土地 80/現金 80 |
| ①譲渡利益額の計上(法22②) | ≪税務仕訳≫現金 80/土地 80未収入金 20/譲渡益 20≪申告調整≫譲渡益計上もれ 20 (加算 ・ 留保) | |
| ②譲渡利益額の繰延べ(法61の13①) | ≪税務仕訳≫譲渡損益調整勘定繰入額(損金) 20/譲渡損益調整勘定 20≪申告調整≫譲渡損益調整勘定繰入額 20 (減算 ・ 留保) | |
| ③寄附金認容(法22③) | ≪税務仕訳≫寄附金 20/未収入金 20≪申告調整≫寄附金認容 20 (減算 ・ 留保) | |
| ④寄附金の損金不算入(法37②) | ≪税務仕訳≫寄附金損金不算入 20/その他流出 20≪申告調整≫寄附金損金不算入 20 (加算 ・ 流出) | |
| ⑤受贈益の計上(法22②) | ≪税務仕訳≫土地 100/現金 80 /受贈益 20≪申告調整≫受贈益計上もれ 20 (加算 ・ 留保)※ 上記の留保は、土地の取得価額の増加となる。 | |
| ⑥受贈益の益金不算入(法25の2) | ≪税務仕訳≫受贈益益金不算入 20/その他流出 20≪申告調整≫受贈益益金不算入 20(減算 ・ 流出) |
| 区分 | 総額 | 留保 | 社外流出 | |||
| 加算 | 譲渡益計上もれ | 20,000,000 | ① 20,000,000 | |||
| 小計 | 13 | 20,000,000 | 20,000,000 | |||
| 減算 | 譲渡損益調整勘定繰入額 | 20,000,000 | ② 20,000,000 | |||
| 寄附金認容 | 20,000,000 | ③ 20,000,000 | ||||
| 小計 | 25 | 40,000,000 | 40,000,000 | |||
| 寄附金の損金不算入額 | 27 | 20,000,000 | その他 | ④ 20,000,000 | ||
| 所得金額又は欠損金額 | 44 | 0 | △20,000,000 | 20,000,000 | ||
| 区分 | 期首 | 減 | 増 | 期末 |
| 未収入金 | ③ 20,000,000 | ① 20,000,000 | 0 | |
| 譲渡損益調整資産(土地) | ② 20,000,000 | △20,000,000 | ||
| 計 | 40,000,000 | 20,000,000 | △20,000,000 |
| 区分 | 総額 | 留保 | 社外流出 | |||
| 加算 | 受贈益計上もれ | 20,000,000 | ⑤ 20,000,000 | |||
| 小計 | 13 | 20,000,000 | 20,000,000 | |||
| 減算 | 受贈益の益金不算入 | 18 | 20,000,000 | ※ | ⑥ 20,000,000 | |
| 小計 | 25 | 20,000,000 | 20,000,000 | |||
| 所得金額又は欠損金額 | 44 | 0 | △20,000,000 | △20,000,000 | ||
| 区分 | 期首 | 減 | 増 | 期末 |
| 土地 | ⑤ 20,000,000 | 20,000,000 | ||
| 計 | 20,000,000 | 20,000,000 |
法人税法 税理士試験 第61回 租税公課 出題の真意 [税理士試験と実務の接点]
これも、当然判断が必要です。
第61回税理士試験[第二問]「法人税、住民税及び事業税」及び租税公課「法人税、住民税及び事業税」及び租税公課」
1 甲社の法人税、住民税(県民税及び市民税)及び事業税(地方法人特別税を含む。)の金額は、次のとおりである。① 前期分
| 法人税 | 県民税 | 市民税 | 事業税 | 合計 | |
| 年税額 | 18,400,000 | 1,000,000 | 2,900,000 | 6,800,000 | 29,100,000 |
| 予定納税額 | 8,700,000 | 450,000 | 1,400,000 | 3,000,000 | 13,550,000 |
| 納付すべき税額 | 9,700,000 | 550,000 | 1,500,000 | 3,800,000 | 15,550,000 |
② 当期分
| 法人税 | 県民税 | 市民税 | 事業税 | 合計 | |
| 年税額 | 16,600,000 | 1,200,000 | 3,350,000 | 8,000,000 | 29,150,000 |
| 予定納税額 | 9,000,000 | 500,000 | 1,450,000 | 3,400,000 | 14,350,000 |
| 納付すべき税額 | 7,600,000 | 700,000 | 1,900,000 | 4,600,000 | 14,800,000 |
2 甲社の決算書原案の租税公課の内訳は次のとおりである。
内 訳 | 金 額 | 備 考 |
| 受取利息に係る源泉所得税及び利子割税 | 186,000円 | 所得税額139,500円及び県民税利子割額46,500円が含まれた総額が受取利息として決算書原案に反映されている。 |
| 固定資産税 | 5,650,000円 | C土地に係る固定資産税精算金として処理した金額が含まれている。 |
| その他 | 4,100,000円 | いずれも損金の額に算入されるものである。 |
問 「法人税、住民税及び事業税」及び租税公課に関して、当期の「別表五(二) 租税公課の納付状況等に関する明細書」を示しなさい。
している。乙社の平成22年12月31日現在の貸借対照表に計上されている土地のうち、C土地に係る金額は9,500,000円である。乙社は平成23年6月1日にC土地を9,500,000円で甲社に譲渡し、甲社は同土地を譲り受けた。C土地に係る固定資産税の年税額は1,200,000円であり、C土地に係る譲渡契約書には「平成23年6月1日以後の固定資産税相当額については、固定資産税精算金として甲社が乙社に対して支払う。」旨が記載されている。C土地に係る譲渡対価及び固定資産税精算金は、同日に決済された。
なお、甲社及び乙社間において、この決済された金額以外の金員が授受される予定はない。
甲社の決算書原案では、C土地は購入代価の9,500,000円で計上されており、また、C土地に係る固定資産税精算金は租税公課として処理されている。C土地は市街化区域にあり路線価が付されており、路線価方式によるC土地の評価額は56,000,000円である。近隣に所在するC土地と利用形態等が類似している土地の路線価は、公示価格の80%相当額となっている。
なお、乙社の平成22年12月31日決算における法人税申告書別表五(一)は次のとおりであり、平成23年6月1日に甲社に譲渡するまで、金額の変動はない。
I 利益積立金額の計算に関する明細書 | ||||
| 区 分 | 期首現在 利益積立金額 | 当 期 の 増 減 | 差引翌期首現在 利益積立金額 | |
| 減 | 増 | |||
| C土地 | 1,000,000 | 1,000,000 | ||
2 C土地の適正な賃借料は月額300,000円であり、甲社は乙社に対して平成23年3月31日に平成23年4月1日から平成24年3月31日までの期間に係るものとして両社の契約書に基づき3,600,000円を支払い、その全額を支払日の属する事業年度の損金の額に算入している。この処理は、賃貸借契約の当初から継続的に行われている。C土地の譲渡取引に伴い、平成23年6月分から平成24年3月分までの賃借料に相当する金額が乙社から甲社に振り込まれたが、甲杜の決算書原案では仮受金として計上されている。
甲社の経理担当者から、「前期の申告について修正申告をする必要があるのではないか。」という質問を受けている。
3 甲社は、C土地の取得に関連して登録免許税及び司法書士への報酬(合計560,000円)を支出したが、決算書原案ではこの金額は仮払金となっている。
≪参考1≫ 中小企業の会計に関する指針(抄)
中小企業の会計に関する指針(以下「本指針」という。)は、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の4団体が主体となり、法務省、金融庁及び中小企業庁の参画を得て策定され、平成17年8月に公表されたものであり、年次ごとの見直し及ひ改正が行われている。
○第3項(本指針の目的)
本指針は、中小企業が、計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すものである。このため、中小企業は、本指針に拠り計算書類を作成することが推奨される。
〔以下略〕
○第58項(法人税、住民税及び事業税) 当期の利益に関連する金額を課税標準として課される法人税、住民税及び事業税は、発生基準により当期で負担すべき金額に相当する金額を損益計算書において、「税引前当期純利益(損失)」の次に「法人税、住民税及び事業税」として計上する。また、事業年度の末日時点における未納付の税額は、その金額に相当する額を「未払法人税等」として貸借対照表の流動負債に計上し、還付を受けるべき税額は、その金額に相当する額を「未収還付法人税等」として貸借対照表の流動資産に計上する。
〔以下略〕
○第59項(源泉所得税等の会計処理)
受取配当や利子に関する源泉所得税のうち、法人税法及び地方税法上の税額控除の適用を受ける金額については、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」に含めて計上する。
このように、「登録免許税及び司法書士への報酬(合計560,000円)」が、単に固定資産の取得価額に算入しないことができることを問う問題ではないと考えられる。登録免許税の額から不動産登記法による評価額を逆算し、その金額と路線価方式による評価額を比較した上で、その路線価方式による評価額が適正な金額であることを検証する能力を試す問題であったと考えられる。税理士試験出題のポイントにも「会社法及び隣接する税目と関係する事項も問題に取り入れた」とあることから、法人税法だけでなく会社法や他の税法について最低限の知識を押さえておく必要があると感じられる問題であったといえる。
法人税法 税理士試験 第61回 貸倒引当金 出題の真意 [税理士試験と実務の接点]
法人税法 第61回 第2問 貸倒引当金を、考察してみます。
PISA型読解力が、すごく必要と感じました。
第61回税理士試験
[第二問]
貸倒引当金に関する事項
1 前期において、一括評価金銭債権の貸倒れによる損失の見込額として3,600,000円を計上したところ、申告書の作成
段階で一括貸倒引当金繰入限度額が3,585,000円であることが判明したので、差額についでは申告調整することで対 応した。
2 決算書原案には、次の事実が示されている。
項 目 | 金 額 | 備 考 |
| 受取手形 | 40,000,000円 | 決算書原案の貸借対照表に含まれていないが、個別注記表に表示されている割引手形が8,000,000円ある。 |
| 売掛金 | 56,000,000円 | E社に対する取引保証金13,500,000円が含まれている。平成15年8月に同社に対して15,000,000円を差し入れたものであり、取引条件の見直しにより、平成24年1月より毎月500,000円の返還を受けている。甲社は入金管理の処理上、売掛金として取り扱っている。 |
また、当期末における金銭債権のうち実質的に債穫とみられない金額は800,000円である。
なお、個別評価金銭債権に該当するものは、従来から生じていない。
3 貸倒実績率の算定に必要な資料は次のとおりであり、金額はいずれも税務上の適正額である。
事 業 年 度 | 一括評価金銭債権の帳簿価額 | 貸倒損失の額 |
| 平成20年4月1日~平成21年3月31日 | 105,000,000 | 2,500,000 |
| 平成21年4月1日~平成22年3月31日 | 87,000,000 | 3,600,000 |
| 平成22年4月1日~平成23年3月31日 | 93,300,000 | 5,800,000 |
| 285,300,000 | 11,900,000 |
4当期から、法人税法上の繰入限度額に相当する金額が貸借対照表に表示されるように、貸倒引当金を計上することとする。また、前期までは洗替法により処理していたが、当期からは差額補充法により処理することとする。
問 貸倒引当金に関して、次の(1)から(3)までの問に答えなさい。
(1) 当期の一括評価金銭債権に係る繰入限度額を、計算過程及びその理由を示しつつ算定しなさい。
(2) 決算書原案を前提に、繰入限度額相当額が貸借対照表に表示されるように、貸倒引当金の計上に係る決算修正仕訳及び申告調整を示しなさい。
(3) 差額補充法により処理する場合に、申告に際して必要と思われる事項を答えなさい。解説
① 個別注記表に記載されている割引手形が一括評価金銭債権に含まれる理由:この設問には、理由が求められています。割引手形が、一括評価金銭債権になる理由を求められているのです。「既存債権」、「手形債権」この言葉を漠然と使っているならば、正解は難しいはずです。「既存債権」、「手形債権」の意味を明確に説明できますか?そもそも意味がわかって使っていますか?「会社法及び隣接する税目と関係する事項も問題に取り入れた。」となる本試験。民法、手形法も視野に入っていると思います。
手形取引を全くサポートできない税理士がいたら、変な話ですよね。
Q 手形の授受により既存債権は消滅するのでしょうか?
A 手形を授受することによっても、既存債権は消滅せずに手形債権と併存すると考えるのが一般的です。
理由を下記に書きますが、民法概念がなければ理解できないかもしれません。債権債務の中枢で仕事をしていく税理士業を意識するなら、下記部分は、解明できる手段(ネットでも、スマホでも、辞書でもなんでもかまいません)を是非身につけていてください。既存債権が消滅するとすれば、債権者は、
①手形授権よりも既存債権の方が時効期間が長いという利益(民法167条1項、手形法77条1項8号、70条1項)を失う。
②原因関係に存した担保権を付従性により失ってしまうことになる。 受取手形が「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権」に含まれるかどうかですが、手形法上(ここも安易にみないでください)は、売掛金等の既存債権について手形で回収した場合は、「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権」に該当するとされています。同様に、割引された受取手形(裏書きも含む)が決済されるまでは、原則として「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権」に含まれるとされています。法人税基本通達11-2-17において、法人がその有する「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権」について取得した受取手形につき割引をした場合には、当該売掛金、貸付金等の既存債権を「売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権」に該当するものとして取り扱うと定められています。また、売掛金、貸付金等の金銭債権(既存債権)について手形を受け取った場合でも、その手形が既存債権の支払いに代えてなされた旨の特約(代物弁済の特約)がない限り、法律的には既存債権と手形債権とが併存するというのが債権法上の通説となっています。 (裏書譲渡をした受取手形)11-2-17 法人がその有する売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(以下この款において「売掛債権等」という。)について取得した受取手形につき裏書譲渡(割引を含む。以下11-2-17において同じ。)をした場合には、当該売掛金、貸付金等の既存債権を売掛債権等に該当するものとして取り扱う。したがって、裏書により取得した受取手形(手形法(昭和7年法律第20号)第18条第1項本文又は第19条第1項本文に規定する裏書により取得したものを除く。)で、その取得の原因が売掛金、貸付金等の既存債権と関係のないものについて更に裏書譲渡をした場合には、その受取手形の金額は売掛債権等の額に含まれないことに留意する。(平2年直法2-6「五」、平10年課法2-7「十五」、平12年課法2-7「十八」、平14年課法2-1「二十六」により改正)(注) この取扱いは、その裏書譲渡された受取手形の金額が財務諸表の注記等において確認できる場合に適用する。 受取手形を自分が持っている債権の支払いのために受取った場合、手形債権と既存債権が併存するという感性を身につけて下さい。そして、通達には、そうした手形を決済される前に銀行で割引いてお金をもらったりしたときは、その手形が期日に本当に銀行で決済されるまでの間、その既存債権を貸倒引当金の設定対象として取扱う旨が書かれているのです。仕訳的には、普通預金xxx/受取手形xxx(手形売却損は、ないものとして・・・)になります。金融商品会計実務指針34に受取手形は、その割引時に消滅を認識すると書かれています。貸方を割引手形と仕訳して金銭債権を借方に残すことは許されないのです。だから、手形を割引いたことを貸借対照表に注記しておく必要がある。通達にも、「財務諸表の注記等において確認できる場合に適用される」って書いてある。そういうわけで、割引いた手形が銀行で本当に決済されたと分かるまで既存債権は債権としてまだ生きている(その既存債権は手形が銀行で決済されなかった瞬間、魚雷的に金銭債権となる)から、それに対して引当金を設定しようという理由で、割引手形は一括評価金銭債権に含まれるのです。 ② E社に対する取引保証金13,500,000円の取扱い:ここも理由が求められているのです。一括評価金銭債権算出上での理由です。E社に対する取引保証金13,500,000円は、取引条件の見直しにより毎月500,000円の返還を受けることとなった時点で、実態は貸付金である。入金管理の処理上とはいえ、貸付金を売掛金勘定で処理することは実務上あり得ないのです。親子間で長期滞留していた売掛金を貸付金と認定され利息を取っていないことで調査で寄附金課税が行われたり、会計監査上も長期に滞留している金額を売掛金のまま放置されることはありえないのです。売掛金と貸付金は、会計上も、税法上も取り扱いが異なる勘定科目なのです。決算修正で売掛金から貸付金に振替えるとともに、公定歩合に4%を加算した利率で計算した利息150,000円*を未収金として計上し、一括評価金銭債権に含めることも検討していく必要があります。*14,500,000x4.2%~4.3%x1/12+14,000,000x4.2%~4.3%x1/12+13,500,000x4.2%~4.3%x1/12第58回~第60回法人税法本試験では、貸倒懸念債権は、売掛金ではなく破産更生債権にするというように金銭債権の科目の重要性を示していました。第61回の進化は科目自体の適正さが加わっています。調査事例でも注意しなければいけない大切な感覚が出題されています。パターン化した学習を避け、思考を重視してください。 ③ 差額補充法により処理する場合に、申告に際して必要と思われる事項:<洗替法> | <差額補充法> | ||||
| 貸倒引当金 1,000,000 | / | 貸倒引当金戻入益1,000,000 | |||
| 貸倒損失 600,000 | / | 売掛金 600,000 | 貸倒引当金 600,000 | / | 売掛金 600,000 |
| 貸倒引当金繰入額1,200,000 | / | 貸倒引当金 1,200,000 | 貸倒引当金繰入額 800,000 | / | 貸倒引当金 800,000 |
SCANDALライブ 中野サンプラザ [音楽活動]
第60回 税理士試験 法人税法 第2問2 [税理士試験と実務の接点]
(1) 甲社は、平成22年5月25日に開催された定時株主総会で、前職務執行期間と同類の役員給与を支給する旨を
決議している。B研究所長を務める取締役Wは、その職務につき前記3の現金持ち出しに関して監督責任を問われ、同年6月10日に開催された取締役会の決議により、研究所長の役職を解かれて担当業務の定めがない取締役となった。これにより、各月の役員給与を1,200,000円であったところ1,000,000円に減額することとし、本人の了承を得て、同月から期末まで同類の支給をしている。なお、Wは使用人としての職務を担当していない。(2) 甲社の取締役W、R及ぴTの3名については平成22年5月25日に開催された定時株主総会の決議により、当職務執行期間の役員給与として同年6月及び12月にそれぞれ500,000円を支給する旨を定め、提出期限までに所轄税務署長に事前確定届出給与に関する届出書を提出している。 このうちWに対しては前期(1)の職務内容の変更に伴う減給により、事前確定届出給与についても変更の届出をしないまま一部を減額した300,000円を6月及び12月に支給している。また、R及びTに対しては、6月及び12月ともに定時株主総会の決議どおりの金額を支給している。なお、R及びTはいずれも使用人としての職務を担当していない。 ■(1) 3月以内改定だから大丈夫? これは、安易すぎます。 定期同額給与は、毎年所定の時期に行われる必要があるのです。 通常株主総会直後に給与決定の取締役会が開催されます。今回の問題の取締役会は、給与決定の取締役会ではなく、不法行為に基因する取締役会です。そこで、たまたま、取締役会の減額が決定されたのです。 言い方を変えます。毎年5月25日に株主総会、取締役会を開催して、5月25日(5月31日)から、給与の増額をしているような中小企業で、他の役員は5月25日から上げ下げして、一人を6月25日から上げ下げした場合、は3月以内改定では、ありません。職務執行期間を6月1日としているなら、大丈夫でしょうが、問題には記載されていません(ここも前提を抜かれています)。 しっかり、臨時改定事由になるかを検討しなくては、ならないのです。「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」 担当が外れたレベルでは、役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更には、なりません。 その他これらに類するやむを得ない事情になるかならないのかを検討していかなくては、いけないのです。 ●第69条 法第34条第1項第一号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は、次に掲げる給与とする。 一 法第34条第1項第一号に規定する定期給与(以下この条において「定期給与」という。)で、次に掲げる改定(以下この号において「給与改定」という。)がされた場合における当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるものイ 当該事業年度開始の日の属する会計期間(法第13条第1項 (事業年度の意義)に規定する会計期間をいう。以下この条において同じ。)開始の日から三月を経過する日(保険会社(保険業法第二条第二項(定義)に規定する保険会社をいう。次項第一号及び第7項において同じ。)にあつては、当該会計期間開始の日から四月を経過する日。イにおいて「三月経過日等」という。)まで(定期給与の額の改定(継続して毎年所定の時期にされるものに限る。)が三月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にあつては、当該改定の時期)にされた定期給与の額の改定ロ 当該事業年度において当該内国法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(次項第二号及び第三項第一号において「臨時改定事由」という。)によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除く。)ハ 当該事業年度において当該内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(第3項第二号において「業績悪化改定事由」という。)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限り、イ及びロに掲げる改定を除く。) (職制上の地位の変更等)9-2-12の3 令第69条第1項第1号ロ《定期同額給与の範囲等》に規定する「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」とは、例えば、定時株主総会後、次の定時株主総会までの間において社長が退任したことに伴い臨時株主総会の決議により副社長が社長に就任する場合や、合併に伴いその役員の職務の内容が大幅に変更される場合をいう。(注) 役員の職制上の地位とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものをいう。 【解説】1 平成19年度の税制改正により、定期同額給与とされる定期給与の額の改定の範囲に、「役員の職制上の地位の変更、役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」(以下「臨時改定事由」という。)によりされた定期給与の額の改定が追加された(令69①一ロ)。この改正は、3月経過日等までには予測しがたい偶発的な事情等によるもので、利益調整等の恣意性がないものについても定期同額給与とされる定期給与の額の改定として取り扱うことを法令上明らかにしたものであるが、どのような事情が生じたときがこれに該当するかについては、個々の実態に即し、事前に定められていた役員給与の額を改定せざるを得ないやむを得ない事情が存するかどうかにより判定することとなると解される。本通達においては、その具体的例示を掲げている。 2 例示の一つは、役員の分掌変更の場合であり、例えば、社長が任期途中で退任したことに伴い副社長が社長に就任する場合は、一般的には、その地位及び職務内容ともに重大な変更があると認められることから、臨時改定事由に該当するといえよう。 もう一つの例示は、組織再編成の場合であり、例えば、合併法人の取締役が合併後も引き続き同じ地位に留まるものの、その職務内容に大幅な変更がある場合等が該当する。 そのほか、会社やその役員が不祥事等を起こした場合に役員給与の額を一定期間減額するということが見受けられるが、このような役員給与の一定期間の減額が社会通念上相当と認められる範囲のものであるときは、その減額改定及び増額改定についても臨時改定事由によるものに該当しよう。 3 なお、ここでいう「役員の職制上の地位」とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等により付与されたものをいい、いわゆる自称専務等はこれに該当しない。本通達の注書においてこのことを明らかにしている。 ■事前確定届出給与に関する変更届出事前確定届出給与に関する変更届出は、臨時改定事由(法人税法施行令第69条第1項第1号ロに規定する役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情をいいます。以下同じ。)…当該臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日つまり7月10日までに出さないといけません。※7月10日までと下記ましたが、この日は、間違いなく賞与支給時期より後になります。この日が、期限として大丈夫
なのでしょうか?賞与は、6月15日にころの支給したと考えると、事前確定届出給与に関する変更届出は、6月14日までに出さない
と、 事前確定届出とならないと考えれば、この問題では出せなかったと考えることもできます。確かに、事前確定
届出を名前通りに解釈すれば、凄くタイトな期限しかない形になります。法的な根拠は、明確ではないですが、事前確定届出給与に関する届出書の提出が、事前確定届出給与の支給日より遅れた場合について、当局は、支給された事前確定届出給与の額が、株主総会等の決議であらかじめ定められた確定額どおりであれば、その届出書の提出時期を問題とする理由はないとの見解を持っているようです。 使用人兼務役員の使用人賞与なら、大丈夫ですが、設問からは除外されています。ただ、指摘すべき項目だと思います。改正で、事前確定届出はシンプルになりました。一番の理由は、使用人兼務役員の使用人賞与を記載しなくてよくなったからです。 ■下記通達の検討(事前確定届出給与の意義)9-2-14 法第34条第1項第2号《事前確定届出給与》に規定する給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給される給与をいうのであるから、同号の規定に基づき納税地の所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合にはこれに該当しないこととなり、原則として、その支給額の全額が損金不算入となることに留意する。(平19年課法2-3「二十二」により追加) 平成19年度税制改正により、事前確定届出給与について既に届出をしている法人が臨時改定事由又は業績悪化改定事由に基因してその定めの内容を変更する場合には、変更の届出を行うことができることとされている(平成19年改正後の法令69③)。 結論は、下記照会要旨になりますが、条文の解釈能力を問われた問題です。 【照会要旨】 当社は、所轄税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出期限内に提出していますが、A役員に対してのみ当該届出書の記載額と異なる金額を支給しました。 この場合において、A役員に支払った役員給与は損金算入できなくなると考えられますが、A役員以外の他の役員に係る役員給与についても同様に法人税法第34条第1項第2号に該当しなくなり、損金算入できなくなるのでしょうか。 【回答要旨】 「事前確定届出給与に関する届出書」の記載額と同額を支給したA役員以外の他の役員に係る役員給与については、法人税法第34条第1項第2号に該当し、損金算入することができます。 (理由) 法人税法第34条第1項第2号では、「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与」と規定しており、個々の役員に係る給与について規定しているものであることから、A役員(=「その役員」)以外の他の役員に対する給与に影響を与えるものとはなっておりません。 したがって、A役員に対して当該届出書の記載額と異なる金額の役員給与を支給したとしても、そのことを理由として、A役員以外の他の役員に対して支給した役員給与が損金不算入になることはありません。【関係法令通達】法人税法第34条第1項第2号 ■(役員給与の損金不算入) 第34条 内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与及び第54条第1項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する新株予約権によるもの並びにこれら以外のもので使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの並びに第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。 一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(次号において「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(次号において「定期同額給与」という。) 二 その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び利益連動給与(利益に関する指標を基礎として算定される給与をいう。次号において同じ。)を除くものとし、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(同族会社に該当しない内国法人が支給するものに限る。)以外の給与にあつては政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしている場合における当該給与に限る。)第60回 税理士試験 法人税法 第2問1 [税理士試験と実務の接点]
第60回法人税法 税理士試験の第2問の国税庁のコメントを見ると
いずれも単純な計算問題ではなく、問題に記載した事項に基づいて事実関係を読み取り、それに即した解釈と判断を要
する。したがって、法人税法のみならず、益金及び損金算入に関する基礎的な企業会計や関連する法規を含む幅広い知
識を試している。
なお、事実関係の読み取りとそれに即した解釈・判断を問うことに主眼を置いた問題とするため、計算書類等を省略して、
所得金額と納付すべき法人税額の計算に必要な資料のみを与えている。また、解答に当たり、判断の根拠と計算の過程
の記述を求めることとしている。
記載されています。
ここを意識しながら、問題に含まれた意図を解明していきます。
■
3 B研究所では、平成22年6月3日に現金20,000,000円が紛失している事実が発覚した。調査の結果、研究員であり研究
費に関する現金出納の責任者であるAが同年4月から5月にかけて持ち出したことが明らかとなったため、甲社ではこの金
額を雑損失に計上した。甲社はAに対して責任を問い、その弁済を求めたところ、Aは謝罪し、弁済する意向を示して辞職した。その後、Aは他の
研究機関に職を得ているが、十分な待遇を得られず、全額の弁済は困難な状況にある。甲社は弁護士を通じてAと交渉中
であり、持ち出した金額の60%相当額を年賦にて支払うとの合意が得られる見込みであるが、当期末までに確定してい
ない。 いわゆる横領です。 「①売上除外、仕入過大」の一歩間違えば重加算の対象になる不法行為と「②現金持ち出し」の不法行為との差がわかりますか? 今回は、当年度に処理ができているので、重加算の対象にはなりません。修正仕訳に差がでてきます。 ①雑損失/売上 20,000,000円 雑損失/仕入 20,000,000円②雑損失/現金 20,000,000円 ①は、収益計上(費用控除)がセットになります。また、未収金/現金 20,000,000円も当然仕訳されます。②は、別途 未収金/益金 20,000,000円が必要になります。 この問題では、12,000,000円が返済されることになるでしょう。8,000,000円は戻ってこないです。しかも分割で・・・・。 ここで、通達を紹介します。(損害賠償金等の帰属の時期)2-1-43 他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。以下2-1-43において同じ。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「六」により追加、平12年課法2-7「二」により改正)(注) 当該損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は、保険金又は共済金により補てんされる部分の金額を除き、その損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。 この通達で、収益計上を、翌期以降にできないでしょうか? 結論から言えば、出だしを検討しなければなりません。この通達が適用できるのは、「他の者」なのです。社員については、安易に適用できないのです。 ここで裁決例を二つ紹介します。 ■裁決例1請求人は、従業員に対する損害賠償請求権の収益計上時期は、請求人が損害を知り、損害賠償請求権の行使が事実上可能となった日の属する事業年度であると主張する。しかしながら、法人税法上、当該事業年度の収益の額は、一般に公正妥当な会計処理の基準に従って計算すべきものとされているから、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金に計上すべきものと考えられる。この権利の確定とは、法律上その権利を行使することができるようになったことをいうものと解されるところ、横領等の不法行為による損害賠償請求権についても、法律上権利行使が可能となったとき、すなわち、不法行為によって損害賠償請求権が発生したときに、その権利が確定し、これを当該事業年度の収益に計上すべきと解される。そうすると、本件従業員の不法行為は、本件各事業年度において行われていることから、請求人は、本件各事業年度において、不法行為に基づく損害賠償請求権の行使が法律上可能となる。したがって、本件における損害賠償請求権は、従業員の不法行為が行われた本件各事業年度において発生し、その権利が確定することとなる。また、A元所長は、本件出張所の業務全般の管理及び仕入れに関する責任者という請求人の主要な地位にあり、従業員の行った本件取引は、請求人の行為と同一視でき、法人税基本通達2−1−43を適用する前提となる「他の者」に該当するとみることはできず、当該通達の適用は認められないことから、本件においては、収益計上時期を損害賠償請求権が発生し、その権利が確定した本件各事業年度とすることが妥当である。(平21. 4. 6 東裁(法・諸)平20-152) ■裁決例2請求人は、元従業員Aの売上金横領行為によって与えられた損害に係るAに対する損害賠償請求権について、Aに十分な資力がないことは明白であり、たとえ損害賠償請求権を行使したとしても実現不能の状態にあったことから、損害賠償請求権という益金が計上されるとともに貸倒損失という損金が計上され、結果として課税所得は生じない旨主張する。しかしながら、Aによる横領行為が発覚した後、請求人とAとの間において本件和解契約が締結されており、この和解契約は、同公正証書の記載内容及び請求人の代表者の答述によれば、Aが請求人及びB社に生じさせた損害額につき、その総額を計算する際、Aの弁済能力を考慮して損害金額よりかなり減額した額で和解し、Aの当該債務の弁済方法等を定めたものであることが認められる。そして、請求人は、その後、Aから本件和解契約に基づく弁済金の一部を受領し、自ら記帳していることが認められる。そうすると、少なくとも、Aが本件和解契約に基づき一部を弁済した時点までは、請求人のAに対する損害賠償請求権の実現不能が明白になっていないというべきであるから、当該損害賠償請求権は、請求人が主張するように当初から明白に実現不能の状態にあったとは認められず、売上金額が横領された本件各事業年度において実現不能が明白になったとも認められない。したがって、本件各事業年度において、Aに対する損害賠償請求権の額を貸倒れとして損金の額に算入することはできない。(平20. 6.19 金裁(法・諸)平19-19) 裁決例1を吟味すれば、収益計上はおこりうるとして、現金責任者ではあるものの、もはや辞めていて、甲社と同一と言えるか?言えないか?他の者と言えるか?言えないか?※他の者と社員の違いがある理由として、社員であれば、給与等から返済を当てるということが可能というのもあるはずです。また、社員ならドラ息子でもかわいいという発想があるからかもしれません。裁決例は、「業務全般の管理及び仕入れに関する責任者という請求人の主要な地位」にいたと主張して、辞めた後でも、「他の者」には認定しませんでした。 裁決例2を吟味し、貸倒損失の計上も吟味しなくては、いけないかもしれません。実現不能が確定していない以上否認は大前提として・・・。※貸倒損失の計上時期は、凄く大切です。和解が成立した段階が、一番客観的です。ここを逃すと損金性がなくなります。 次に、雑損失で大丈夫か?給与課税をうけないのか? 法人がその社員の横領を黙示に承認していると見られる場合には、社員に対する給与認定もありえます。法人自体が当該行為を承認せず、横領という犯罪行為として対応している場合には、給与認定はないことになります。被害者として、当該横領した社員に対して損害賠償請求の訴訟等(本問題はここまでは、していません)を提起しているような事実関係の下では給与の認定はありえないことになる。 ここで、租税学的な話になりますが、「横領等の行為により受けた損害額に対して取得した損害賠償請求権の収益の認識は、その横領者である役員又は使用人の置かれた状況、損害賠償金の支払可能性等に照らして、「法基通2-1-43」による異時両建説による税務処理を課税実務(課税当局)が積極的に取り入れて運用すべきであると考える。それが納税者の租税負担能力に応じた課税関係が形成されるといえるからである。」という租税学者は、多いのです。税務当局は、現状消極的ですが、いくつか新たな判例がでてきて、「他の者」でなくても異時両建説をしっかり検討する必要があるのです。 不法行為に係る損害賠償金等の帰属の時期-法人の役員等による横領等を中心に- 1 問題の所在 私法上、他人の不法行為により損害を受けた場合には、その損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得するものと解されている。そして、法人の課税所得の計算においては、このような不法行為により被った損害に係る損失の損金算入時期及び損害賠償請求権の益金算入時期について、学説上、損失確定説、同時両建説及び異時両建説が存する。 法人税法上、いずれの説を採るべきかについては、最高裁昭和43年10月17日判決(裁判集民事92号607頁)において、法人の代表取締役の横領行為によって生じた損失とこれに対する損害賠償請求権の計上時期が争われた事件について、原則として同時両建説によるものとの判断が示され、一応の決着をみたところである。一方、その後の課税実務においては、昭和55年の法人税基本通達改正に際して、その相手方がその法人の役員又は使用人以外の「他の者」である場合には、異時両建説を採用し現在に至っている。 この点について、上記の通達改正の前後から、不法行為の相手方が当該法人の役員又は使用人であっても異時両建説により損益計上を行うべきとの指摘をする学者、実務家が見受けられ、現在、学説上は同時両建説と異時両建説とが拮抗しているといわれている。また、裁判例においては、これまで前掲最高裁判決に沿った判断が続いていたところ、最近において、法人の経理部長の横領行為が税務調査で発覚した事件について、損害賠償請求権の益金算入時期をその行使が事実上可能となった時(法人がその損害の発生と加害者を知った時)とする判決も出されているところである。 これまで学説上様々な議論がなされ、また、裁判所の判断においても下級審ではあるが新たな判断が出されているのは、課税当局が法人税法上の取扱いについて必ずしも具体的な指針を示していないことも要因の一つと考える。課税実務においては、法人が自己の役員又は使用人の不法行為により損失を被る事例は少なからず見受けられるところであり、この際、最近における議論を踏まえながら、いかなる取扱いが妥当するのか、研究しておく必要がある。 2 研究の概要(1)主な学説の検討イ 学説の動向①損失確定説…被害発生事業年度において直ちに損益の認識をすることなく、その損害賠償請求権の行使の可否により実際の損失額(ネットの損失額)が確定した事業年度において当該損失額を損金の額に算入する。 ②同時両建説…不法行為による損失については当該損失が生じた事業年度の損金の額に算入することとし、これと同時に取得する損害賠償請求権を同事業年度の益金の額に算入する。 ※参考 ①は、適当ではないです。①当期 未収金 20,000,000円 / 現金 20,000,000円 翌期 雑損失 6,000,000円 / 未収金 6,000,000円 ②当期 雑損失 20,000,000円 / 現金 20,000,000円 翌期 未収金 20,000,000円 / 益金 20,000,000円 ロ 各説の比較検討 損失確定説は、不法行為による損失と損害賠償請求権は密接不可分の関係にあることから、当該損失については法人税法22条3項3号の規定による損失額の確定が求められ、損害賠償請求権の行使による実際の損失額(ネットの損失額)の確定をまって損金算入するとの考え方によるものである。しかし、不法行為により法人の財産が毀損した事実を損失額の確定まで税務上認識しないこととなり、また、法人税法22条2項及び3項の文理上は、収益及び費用は、それぞれ別個に益金の額、損金の額に算入されると解することが素直であろうから、適当ではないと考える。 同時両建説は、他人の不法行為により損害を受けた場合にはその損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得するという私法上の法的基準と合致させ、また、不法行為による損失と損害賠償請求権が同一の原因から生ずるものであることから、損金と益金とを同一事業年度に計上すべし、との考え方によるものである。しかし、この考え方に対しては、損失確定説と同様に、法人税法22条2項及び3項の文理上からは、常に同時両建説が妥当するとの考え方には疑問を呈せざるを得ない。 異時両建説は、不法行為を受けたことにより取得する損害賠償請求権はいわば観念的・抽象的な債権であり、多くの場合回収が困難なものであることから、収益として確定したものではなく担税力の観点からすれば所得を構成するものではない、といった考え方によるものである。しかし、損害賠償請求権といえども金銭債権であることは疑いのないところであり、税法上、他の金銭債権と異なる取扱いをなす規定が存しない以上、このような考え方にも疑問なしとしない。また、不法行為による損害といっても、その内容は様々なものがあり、特に、横領等の加害者がその法人の役員や主要なポストに就いている使用人である場合には、課税当局の主張するように、その行為が個人的なものなのかどうかを峻別する必要もある。実務においては、法人の役員又は使用人による横領等の不法行為は、不幸にしてまま見受けられるところであり、債権の性格のみに着目して、ただちに異時両建説によるべしとの主張には首肯できないと考える。 (2)現行取扱いの概要 法人税基本通達においては、損害賠償金の益金算入時期につき、その相手方が「他の者」である場合には、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度又は実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入することとしている(法基通2-1-43)。課税当局が、このような異時両建て(ないしは現金基準)による処理を認めているのは、損害賠償金といってもその原因は多岐にわたり相手方に損害賠償の責任があるかどうか当事者間に争いのあることが少なくないこと等から確定的な収益といえるか疑問なしとしない面があることがその理由であると説明されている。 他方、その相手方が「他の者」に当たらない場合、すなわちその法人の役員又は使用人である場合には、通達上その取扱いは明らかにされておらず、上記通達の趣旨解説において「例えば、役員の場合にはその行為が個人的なものなのか、それとも法人としてのものなのか峻別しにくいケースが多いことから本通達をそのまま適用することには問題がある場合が多い。」とし、「役員又は使用人に対する損害賠償請求については本通達の取扱いを適用せず、個々の事案の実態に基づいて処理することとされている。」と記述されるにとどまっている。 (3)現行取扱い及び学説からみた問題点 現行の取扱い及び学説については、課税実務上の観点からは、次のような問題点を指摘できる ①課税当局が示している現行の取扱いは、損害賠償請求の相手方が「他の者」である場合とその法人の役員又は使用人である場合との取扱いの差異について、それぞれ別個の観点から説明されている上、相手方が後者の場合には、ケース・バイ・ケースで処理すべきとの説明は、実務上の具体的な指針を示しているとは言い難いと考える。 ②不法行為による損害といっても、その内容は様々なものがあり、学説上のいずれの説を採ったとしても、すべてのケースについて一律に適用することは困難であると考える。特に、横領等の加害者がその法人の役員や主要なポストに就いている使用人である場合には、課税当局の主張するように、その行為が個人的なものなのかどうかを峻別する必要もある。 ③最近の学者の論調では異時両建説が有力視されるが、その論拠として、被害発生事業年度においては、損害が生じている反面、その回復のための資金流入がないことなどから、納税者に「酷である」として、「宥恕的取扱い」を採るべきであるとの主張も多い。しかしながら、租税法律主義の観点からは、法的な理由付けがなされるべきである。 以上のような問題点からすれば、今後の取扱いを考察するに当たっては、現行の加害者が役員又は使用人である場合と他の者である場合といった区分のみによるのではなく、租税法の立場からの法的根拠を整理すべきと考える。この点、現在の学説上拮抗しているといわれている同時両建説と異時両建説の相違は、結局は損害賠償請求権の益金算入時期であることからすると、法人税法における益金の基本的な認識基準である権利確定主義の観点からの検討が、適切な取扱いを考察する上で不可欠となろう。 (4)権利確定主義と損害賠償請求権イ 収益の年度帰属と権利確定主義 法人税法においては、益金の額に算入する収益の額の年度帰属について、原則として、同法22条4項により発生主義のうち権利確定主義によるものと解されている。そして、この場合の「権利の確定」の意義については、唯一絶対の基準があるものではなく、通説、判例からは、これを権利の「発生」と同一ではなく、権利発生後一定の事情が加わって権利実現の可能性が増大したことを客観的に認識することができるようになったときを意味するものとしており、具体的には各種の取引ごとにその特質を検討して判断することとなるとされている。 このように、「権利の確定」がいつであるかについては、それは多義的であり唯一絶対の基準があるものではないが、かといって単純に個別判断によって決するものということにもならない。すなわち、私法上の法律関係に基づいてその「発生」がいつであるかについては十分に認識が可能であって、それにその権利の内容、すなわちその相手方、金額その他権利の内容、範囲が明らかであるかどうかで「確定」しているかどうかを判定することができるものと考えられるのである。 ロ 損害賠償請求権と権利の確定 損害賠償請求権については、例えば、それが不法行為による損害に基因するものであれば、私法上、被害者はその損害の発生と同時に加害者に対する損害賠償請求権を取得することとなる。これにより、その権利の「発生」は、損害の発生と同時となる。 法人が取得する損害賠償請求権が権利確定主義における「確定」したものとなるためには、その相手方、金額その他権利の内容、範囲が明らかであることを要するものと考える。損害賠償請求権といってもその内容は様々であり、例えば、特許権や著作権などについての権利侵害によるものであれば権利侵害の事実の確定や損害額の算定を、交通事故による損害であれば過失割合の算定などを待たねばならず、これらの場合には、権利の「発生」と「確定」の時期が異なるケースが多いこととなろう。 他方、例えば、その損害がその法人の役員又は使用人による横領による損失であるような場合には、通常、当該損失の発生時における相手方、損害額が判明しているため、損害賠償請求権はその時において権利が「確定」したものということができよう。 (5)その他の論点イ 回収可能性からみる損害賠償請求権の益金計上の可否 損害賠償請求権の益金計上の問題については、その権利は、爾後の回収の可能性が乏しいことが通常であり、観念的・抽象的な債権というべきものであるから、実際にその金額が回収された時点で益金とすべきであるとの見解も多い。 しかしながら、権利確定主義の本旨は、収益の計上につき、そのタイミングを人為的に操作する可能性を排除しようとするところにあるのであるから、例えば、債権であればそれが法的に発生しており、かつ、法律上その行使ができるか否かによって税務上その権利の「発生」、「確定」を捉えるべきである。したがって、回収可能性の問題は、別途、その債権についての貸倒損失の計上、貸倒引当金の設定という問題となるのであり、権利確定主義の下、権利の「発生」、「確定」という問題と、債権の回収可能性の問題とを混同してはならないと考える。 また、私法上も、会計上も損害賠償請求権と一般の金銭債権とを別異に取り扱うこととはされていないことから、税務上のみそのような取扱いをすることは困難であると考える。 ロ 法人税基本通達2-1-43の妥当性 権利確定主義からの検討からすると、不法行為の相手方が「他の者」である場合に、損害賠償請求権の益金算入時期につき、一律に異時両建て(ないしは現金基準)による処理を認めている現行の法人税基本通達の取扱いについて、その妥当性に疑問が生ずることとなる。しかしながら、不法行為に係る損害賠償請求権は、突発的、偶発的に取得する債権であるところ、特に相手方が他の者である場合には、その身元や損害の金額その他権利の内容、範囲が明らかでないことが多いであろうから、その場合、その権利が確定しているとはみられない。したがって、相手方が他の者である場合に、被害発生事業年度において損害賠償請求権の益金算入を求めないとしても、権利確定主義の観点からも妥当した取扱いであると考える。 3 結論 法人が支払を受ける損害賠償金に係る損害賠償請求権の益金算入については、学説上の同時両建説、異時両建説に拘泥することなく、その損害と同時に取得する当該損害賠償請求権が、権利確定主義の観点から、それが「発生」したにとどまるものなのか、「確定」しているものなのかに応じて益金計上時期が決せられることが相当である。すなわち、法人が損害を受け、相手方に損害賠償を請求する場合において、その損害賠償請求権の相手方が特定され損害額が算定されるなど権利の内容、範囲が確定した時点で益金に算入すべきものと考える。損害賠償請求権が損害の発生と同時に「確定」している場合にはその損害が生じた事業年度において当該損害賠償請求権を益金算入(結果として同時両建てとなる。)し、損害の発生時には損害賠償請求権は権利の「発生」にとどまる場合には当該損害の損金算入が先行する(結果として異時両建てとなる。)こととなろう。 そして、法人の役員又は使用人による不法行為による損失とこれに係る損害賠償請求権については、次のように取り扱うべきと考える。 ①その損害がその法人の役員又は使用人による横領による損失であるような場合には、通常、損害賠償請求権はその時において権利が「確定」したものということができるのであるから、被害発生事業年度において、当該損失の額を損金の額に算入するとともに、損害賠償請求権を益金の額に算入する。 ② 相手方がその法人の役員又は使用人であっても、権利の帰属を巡る損害賠償請求や交通事故による損害賠償請求のように、私法上の権利の取得の時点で、その権利が「確定」していない場合には、それが確定した時点で損害賠償請求権を益金の額に算入する。



